ほじくりかえして

ようこそ地球さん (新潮文庫)

ようこそ地球さん (新潮文庫)

 実家に帰省したついでに、星新一の「殉教」を読み直してみた。人間は未知のものに恐怖を抱く。それの最たる例が「死」。だれも死後の世界(が、実際存在するのかすらも)知らないのだから。改めて怖くなった。そんな死後どうなるのかもかわらないのに年間何万人と自殺している世の中である。この話に出てくるような装置が実際に発明され、信頼できる人から「死後の世界は快適だよ。こっちに早く来い」などと言われたらどうなるのだろうか。「死」という最強のストッパーとなりえたものが取り払われたら人間はどうなるのだろうか。そして、既に「宗教」がこの物語にでてくる「装置」になりえているのではないか・・・。「殉教」というタイトルにはそういった意味も込められているのだろうか。
 でも、思った。僕は、信じるという能力が欠如した人間の一人だろうと。死後の世界が快適だといわれたとしても自殺はしないだろう。なぜかと自分でも考える。いつか必ず死ぬんだから、というのはあるのかもしれない。だったら、生きているこの世の中を楽しんだ方がいいじゃん、と。死後の世界はかならず体験できるなら、ちょっと快適ではないかもしれない生の世界を楽しみたいと思う。難しい事はわからない僕だけれど、そう考えた。
 能力が欠如し手いる僕は、ブルドーザーを運転する側になると思った。